鳥取市の仁風閣と松江市の興雲閣


仁風閣(鳥取県鳥取市)

鳥取→境港→松江→出雲→岡山をめぐる、ゆるゆるな旅で出合った偏愛物件をピックアップの前編。

社寺は信仰の場なので、観光とは別に基本は檀家さんや氏子さんが支援するなど、資金込み込みのバックアップシステムがあるよね。だから大船に乗って木造の古い神社仏閣の建築技術や文化財を拝ませていただいてる。観光収入でさらなる補修をしてくださいねとも思ってるけどね。

その点、地域に点在する文化財などは集客や維持管理などそれぞれの組織や自治体がそれぞれのやり方で頑張ってる感じかと。何が理想なんだろうね。建物にとって、守る側にとって、見る側にとって。

個人的には時間の流れが感じられる空間が好きなので、天井良いなぁ、照明いいなぁと眺めてるだけで幸せです。何度も見に来るかと言われたら、何度も来ません。でもね、例えばそこにお庭とかが有って素敵な桜が咲いてたら、来年も来るかも。つまり、桜を愛でにくるかも。桜の代わりにアートで喚起するという手法も使われたりするよね。イベントを仕掛ける場合もあるし。つまり、記念館を作りましただけではなくて、何度も足を運ばせる口実作りの方こそが大切なんじゃないかと思ってるのです。

重要文化財 仁風閣(じんぷうかく)

鳥取砂丘までの路線バスで鳥取城付近を通過したんですよ。あら自然がいっぱいじゃん、良さそうなところじゃん。お城には興味がないけど、このエリアをぶらぶらするのは楽しそうだなぁ。バスは帰りも通過する筈なので、狙い撃ち。ここぞと思うバス亭で降りてみました。すぐに、古そうな建物を見っけ。いそいそわくわくで探訪したのが「仁風閣」です。

明治40年に建てられたフレンチ型ルネッサンス様式の木造建築で、旧鳥取藩主であった池田仲博侯爵さんの別邸だった。
詳細はこちらからご覧くださいね。

風格いっぱい。全室撮影OK。平日だし空いてたから、もうね思う存分楽しみました。写真で見るよりケバくなくてどこもかしこも上品で美しい。状態も良くて素敵。玄関付近は風通しも良くてシャンデリアが揺れたりしてハイカラなんですの。うっとり。

なんと支柱のない螺旋階段!見た目は美しいけど、チャレンジングだよね。だって、揺れて怖そうだもん。立ち入り禁止で良かった、なんてね。そうそう、螺旋階段なんて私ごときの腕では旨く撮れないんだけど、遭遇すると毎回なんとかカッコ良く撮れないもんかと悪戦苦闘してしまう。幻夢へと誘う路のようで浪漫がいっぱいだと思いません?

ベランダも出てOKで大感激。まぁやっぱ耐震の関係からか、ベランダはなかなか拝見させていただけないのよ。歩かせていただけて嬉しかった!広さも充分あるなぁと実感。天気も良いし最高じゃん。

この建物は、映画「るろうに剣心」の武田観柳の屋敷として使ったんだそうなんですよ。お庭でチャンバラやってる撮影シーンの写真が張ってありました。映画に使うとなると、まぁ撮影時はいろいろ大変だと思うけど、建物や室内、そして風景がちゃんと記録されるから記念になるよね。聖地になるとか。

敷地内に宝扇庵(ほうせんあん)という茶室があり、そこだけ純日本風庭園に囲まれてました。宝隆院庭園(ほうりゅういん)という池泉回遊式らしい。でもさ、椅子とテーブルがあらまぁ驚きのモダン仕様だった。もしかして仁風閣のイベントで使うのかな?ここは解説がないと解らないわね。事前に予約すれば案内ガイドも有るそうだけど、お一人様でそんな大層な事は出来ませんて。尚、この建物は結婚式の前撮りに使おう!と今時のアピールもしてますし、コンサートやトークイベントにも使ったりしてるようです。[旅行日:2017年9月]

島根県指定有形文化財 興雲閣(こううんかく)

「興雲閣」の方は、前日にマップで小泉八雲記念館と旧居あたりをチェックしてて洋館があるじゃんと発見。これは見逃せませんねとマーキングしておいたのです。念願の小泉八雲記念館と旧居を詣でた後に松江城無料エリアをぶらぶらしつつたどり着きました。松江城の一帯は結構広い。毎度ながらGooglemapさん有難う!

こちらは、明治36年に松江市工芸品陳列所として建てたお館との事。おっと、そうきたか。そのワリには絢爛豪華なんですけど・・・・と思ったよね。私もそこは気になった。なんとなれば、明治40年に皇太子嘉仁親王(のちの大正天皇)の山陰道行啓の際、「仁風閣」と「興雲閣」は御旅館となり、迎賓館としての役割を果たした。のだそうなんですよ。つまりそれ相当の資金を投入した建築物なのである。大ざっぱすぎるかしら。言い回しが難しいので興味のある方はWebでご確認を。

無料です。展示室をざっと見てから、上がっていいの?と受付の方に聞いてお二階への素敵な階段を登る。「仁風閣」と似たような時期に建ててるなぁと思ってたら、鳥取県の「仁風閣」と島根県の「興雲閣」が繫がってしまった。お隣さんですもんね。それなりの要請がありお支度したという事ですね。なるほどね、何かと共通してる感はありましたもん。どちらもお城の領地内にあり風光明媚。御座所、謁見所、貴顕室とか有ったのですよ。でもね、建築様式としては、いろいろ違っているようではあります。「仁風閣」は有名な建築家さんの設計とか。

私は見た目だけでOK派。あらら〜ベランダに出られないのか、悪天候だからなんてツイてないじゃんと思ったくらい。お二階は大広間でした。ここはレンタル可なんですよ。披露宴が出来るのかな。トークショーやったらカッコいいかも。150人収容だそうなんだけど余裕だなぁ。300人くらい入りそうだよと思ったなり。最近250〜300名のトークショーの場所探しに困窮してたから(笑)。

興雲閣・亀田山喫茶室

思いがけない出逢いが有り驚きだったのよ。マップにはこの「興雲閣」に喫茶マークが着いてたから良い感じだったらお茶しようと思ってました。ちょい行政っぽいノリの場所には、それなりな施設しかないので期待はしない。

公共事業って、さも公平にやってますと、コンペやプロポーザルで業者を決めたりするでしょ。そもそも入札業者でないと、コンペには参加できないのが普通だし、参加資格を得るには審査期間が必要。おそらくそれ相当の実績も必要。最近は指定管理業者への委託もありますね。味やスタイルやベストマッチングや意欲よりも、つつがない運営が求められてる。新参者はいくら意欲的でもチャンスは多分巡ってこない。いっそのことスタバを入れればいいやんと良く思ってました。まぁそれでは地元の業者に不利なのでマズイだろうけどさ、スタバなら少なくとも集客力とお味は安定してると云えるでしょ。

入口を入ってすぐ左側、建物の一角が「亀田山喫茶室」になってるの。まんま明治の風が流れてるようだった。わぉ!天井が高い。でね、なんと自家製のケーキを出してくれる素敵な喫茶室だったのです。ショーケース撮り忘れた。え〜っこんな事ってあるんだと感激しちゃった!ケーキも珈琲もバッチリ美味しかった!!

最初にオーダーしたタルトが本日分は終わってたのだったと思う。メニューを見つつ、何気にこれってどんなタルト?と聞いたのよ。甘めとか酸味があるとかの返事が聞きたかったのさ。そうしたら、誰かを呼びに行ってしまったの。おっと、そんな大層なつもりはないのよ・・・と焦る。若くて素敵な女性パティシェさん(店主さんだと思う)が来てね、なんと島根弁(だと思う)で説明してくれちゃうの。好きなものだからちゃんと説明したいという熱意が伝わってきて、めっちゃ可愛いのよ!一生懸命なの。

食べ終わった頃にもやってきて、押しつけちゃっかもしれない。どうだった?と聞いてくれるの。若いって素晴らしいわ!と久々に体感しましたよ。曰く、このケーキを焼いた時に店員さんと試食して評判が良かったのだそうです。だから薦めたと。マジで好みだったのでたっぷり誉め倒しましたね。お互いにホクホク!!

ふと、昨日は雨だったのでここまで来れなかったというような事を言ったらね、そうなんです曇りが多くて鬱々としてるのが「ザ・サンイン」なんですよと両手を広げて自虐アピールをするんだよ。わぉ!でもこの時はさっと晴れてきてたから、窓からの日差しもめっきりと明るい気持ちの良いティータイムだったのさ。

京都府立植物園のお隣には「In The Green」というパスタと窯焼きピザの素敵なお店がある。この時は桜のウォッチングに行ったんだけど、ピザを食べに来るだけでも有りだよと思った。美味しいし、頑張ってるお店だった。さすが京都だなぁ、都会じゃんと羨ましかった。見たいものと食べたいものがセットであるとそのスポットの魅力はぐんと増すよね。ピザが食べたいのか桜が見たいのかどっちだ?どっちもだ!!

※京都府立植物園とIn The Greenの関係は存じ上げません。In The Greenのテラス席から植物園内が少し眺められる。

興雲閣は松江市の所有で島根県指定有形文化財。「亀田山喫茶室」さんがどういう経緯でここに展開されてるのか不明なんですが、凄いススンデルじゃんと思ったんだよね。松江市頑張ってていいなぁ。亀田山喫茶室が存在することで松江市の印象はヒートアップ。とても羨ましかった!

ザ・サンイン

素敵な建物には居心地が良くて美味しいものが出てくる喫茶が似合うと思いませんか?そもそも運営側が建物への愛着をたっぷり持ってて欲しい。私は、それが理想なんだよね。文化だと思ってる。自家焙煎してる珈琲店や、美味しいランチでもいいかな。ともかく「この程度で良いだろう」的なタイプのメニューはひとつもいらない。それなりの拘りを持ってチャレンジし続けるようなお店が好き。応援したい。

私が松江市民だったらさ、ケーキを口実に「興雲閣」に行く、遠来からの友人を「興雲閣」にご案内してお茶する。口実はいっぱいあるよ、ほらケーキが美味しいとなると、りんごのケーキだの栗のケーキだの旬が待ち構えてる(笑)。松江城の桜や紅葉とかさ。こんな風な相乗効果こそが文化財を守り、活性化も狙える・・・と思ってるんです。観光客をあてにするだけじゃなくて市民こそを喚起する手があるよ。と私は言いたいの。ほらね冒頭でほざいた「口実」に戻ってまいりました。

街づくりの話は、別の機会にしますね。ここを読んでいる方で、もし松江に行く機会があったら是非、興雲閣をご覧になってお帰りには亀田山喫茶室でお茶してくださいな。特に甘党の方にオススメ。私はと云えば、山陰と言ったら一生、彼女の「ザ・サンイン」が眼に浮かぶと思う。良き想い出になりました。感謝!そしていつの日かまた行くぞ!![旅行日:2017年10月]

※さらなる過去記事
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