ラッキーな記念館


楽譜付きの土塀

熱海梅園内・中山晋平記念館

この物件は偏愛でもなんでも有りません。すごくラッキーな記念館だなと思ったんですよ。

記念館ってアチコチにあるよね。その人が有名なのかどうか、記念館の存在意義があるかどうかも時代によって結構変動してるんだと思う。大昔からの有名人の記念館はそりゃあるだろうと推察できるから省くね。石川啄木とか太宰治とか堀辰雄とか小泉八雲とかさ。文学関係中心ですいません。

最初にあらら・・この人の記念館があるのか!と驚いたのは三浦綾子記念文学館の存在だった。彼女のデビュー作「氷点」は朝日新聞の懸賞小説。受賞後は新聞に連載されててね、リアルタイムで読んでいたんですよ。歴史の証人みたいな言いぐさだつーの。

センセーショナルな内容ではあったけど、好きなタイプではなかった。でもね、結末が気になった記憶はある。謎があれば結末が気になる癖なのだよ。その後、新珠三千代と内藤洋子のドラマ版が大ブームになった。そんな風にデビューから知ってる作家さんなのに記念館があるなんて、どんな珍しいものがあると云うのだろうと不思議な気がした。あんたが歳をとっただけだよと言われればそうだけどさ。南方熊楠とか泉鏡花とか謎めいてるビッグネームの場合は解るんだよ。自分が感じた謎は自分で解析するぞとか、研究しちゃるとか貴重な資料に挑んでみやう、とかさ。何故三浦綾子なんだろ?と、実は今でも思う。

有名な作家さんの記念館って全国にいくつあるの?結構あるのかもしれない。でね、それはともかく、地域の名士だという事で、補助金や助成金を集め鳴り物入りで記念館開設にこぎつけてもさ、維持管理つまり運営はなかなか大変だと思うんだよね。町おこしで、つい担ぎ上げてしまったとかさ。美術館のように企画展をやったりして最初から運営してゆく気満々で作ってるんだろうか。見せるものって、そんなにはないでしょ。物書きの場合は、机、筆記具とか原稿とか写真とか蔵書だよね。彼女は戦後の作家さんだから貴重な資料といっても塩狩峠関係??(このあたり勝手に想像してるだけ)。通い詰めるほどの情報量があるのだろうか、どうなんだろうか。人ごとながら気がかりなり。

さてと、中山晋平記念館はね、立地が良いんですの。梅の季節は人気絶頂の熱海梅園の中にあるもん。熱海梅園に梅が咲いてない時の人出は解らないんだけど、Webページをチェックすると紅葉はいけそうですな。ライトアップもあるようだ。この熱海梅園は、観光スポットとして名が売れているでしょ。梅まつりの時は有料なんですよ。もうね半端じゃない人出で盛り盛り。大型観光バスもやってくるし、イベントもやってるし、平日でも混み混み。東京から近い人気スポットって迫力が違うなぁと思ったもん。

でね、私も梅まつりの時に、この中山晋平記念館を「ついで」に見学した。申し訳ないけど、中山晋平氏にも偉業にも興味はない。まぁ無料だから休憩がわりにねって感じ。なんとなくだけど、同じ目論見の方が多そうに思ったのよ。えっ!これって凄くない!こんな風に一定の集客が確保されてる形態に感嘆。熱海市エライ!やっぱ人が来てこその記念館だと思うんだよね。ついでだろうが、なんだろうが、かまったこっちゃない。

この建物は、昭和10年に熱海市内に別荘として建築。昭和19年から亡くなる昭和27年まで中山晋平さんが居住。つまり戦禍を免れた物件ですね。昭和37年から日本ビクターが管理し公開。平成2年には熱海市に譲渡し、その際、熱海梅園に移築したのだそうなんですよ。

当たり前だけど、どこもかしこも昭和。高度成長期以前の昭和だね。祖母の家も、別宅が焼け残ったんですよ。似てるところが多く、こんな風だったなぁと懐かしくはあったけどね。取っ手などの丁寧な建具とか、縁側の風情とか。でも、それは古き良き昭和がさくっと残ってる事への郷愁であって、中山晋平さん家じゃなくても良いんじゃないの・・・・。と思ったのでした。

ピアノや蓄音機などは有ったけどね。それと、お外のモニュメントというか塀の模様ですね、これだけは気合い入りだった。「熱海ぶし」という唄の楽譜と貫一・お宮みたいな絵がレリーフになっているんだよ。これって有名な唄なのかな。唐突すぎてバリバリ異彩を放ってました。

でもさ、あらら・・・ちょっと調べてたら「中山晋平記念館」てのが長野県中野市に有りました。なので、熱海のは別荘バージョンなのでしょうか。内心、資料とかこれしかないのか半端だなぁと思ったのよ。本家っぽい方からは熱海版にはリンクをしていないんですよ。存在すら触れられてないみたいだった。記念館シリーズもどっちが本家とか言っちゃたりして、奥深いのかしら。うっ、中山晋平氏に興味あるワケじゃないし、思いつきで取り上げたのにややこしいのに当たったかもだ・・。ま、そこは今回触れず。

遺族としてはね、建物とともに資料やお道具をまとめて管理して欲しい筈なんですよ。何が必要で何がいらないかが、素人では解らないのだ。つまり、あっさり捨ててしまって良いのか、後々研究の対象になるのかの線引きが難しい。ともかくそれらしい品々をまとめて保管できる場所があったらラッキーだと思うの。保管場所が確保出来なくて困窮する場面は絶対にある。名も無き蔵書家の相続ですらスペースが問題になるでしょ。それと、後に何か重要なモノが見つかった時にも、管理者が解っていれば散逸が避けられるしさ。

そんなこんなでさ、この中山晋平記念館は、記念館が存続してゆく為に必要なポイントをさりげなく押さえていてラッキーだと思ったのよ。もっと貴重な資料が揃ってる記念館でも存続に苦労してそうな所があると想像できるからね。貴重である事や重要である事と、人気のある事が引き合うとは限らないのが世の常ですやん。

維持管理費をどうやって捻出するか。梅まつり期間中は梅園を見るために入場料を払った人がざくざくやって来る。中山さん家はついでに見て貰えるように無料でスタンバイ。梅園は見たくないという場合は、梅が咲いてない時期に来ればモチロン無料。こんな風に、ついで感を旨く突いているじゃんと思ったのでした。熱海市との結託がそうさせてるでしょ、やるじゃん。これからは共存共栄というか、共有の時代ですよ。これについては改めてじっくり書きたいと思ってて、これは前ふりでもあるのだった。

オマケ>梅まつりなんですが熱海市民と熱海市に宿泊した人には割引があったんですよ。こういうのって市をあげて頑張ってるようでいいなぁと思ったのだ。割引率の問題ではなくて一体感が大事だよ。さすが長年観光都市をやってるだけのことはある、ぬかりないよね。

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